「オマージュTAKARAZUKA-春 プリマヴェーラ」展アーティストトーク

ゴールデンウィーク半ばの5月4日、「宝塚」と「春」をテーマにした展覧会、「オマージュTAKARAZUKAー春 プリマヴェーラ」展を再び訪れました。この日はちょうど、展覧会会場の2階のメインギャラリーで、作品を観ながらアーティストによる解説を聴くイベント、アーティストトークが行われていました。
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アーツセンター(宝塚市立文化芸術センター)で過ごすゴールデンウイークの一日。なんだかとても優雅な気分です。
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今回の企画展の入り口は、春らしい色鮮やかな作品が映える真っ白なゲート。どんなアーティストトークが聴けるのか楽しみです。
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アーティストトーク一人目は、第1室(花の部屋)への入口を入ってすぐの場所に展示されている作品の作者、川口奈々子さんでした。「hide and seek」(かくれんぼ)と題された作品は、「おーい」と呼んで探している女の子とその左の男の子が可愛らしい作品。どのように見るかは見る人の自由だけれど、川口さんの解釈としては、男の子ように見えるのは女の子自身で、自分の中に声をかけているイメージなのだそう。川口さんの絵を読み解くキーワードの一つは「カモフラージュ」。「私の中に隠れているもの」を探しているというテーマですが、たくさん色を使えば使うほど、大切なものを覆い隠しているというイメージ。「明るい色や楽し気なものに包まれているけれど中に何かを隠している。何を隠しているのかは、見ている人に感じていただけたら」と川口さん。
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右側の大きな作品は、今回の展覧会のために制作された新作。「Nature in the girl / Spring 2023」(女の子の中にある自然)というタイトルの作品です。この作品の中にも、カラフルな色彩の中に隠されたいろいろなイメージを見つけることができます。川口さんは女の子を一つの山に見立て、その中に涙のような川の流れや、火山のマグマのような髪の毛などを一体化させて描いています。母なるもの(女性)から自然・地球・大地が生まれてくるというイメージが常に川口さんの中にはあり、森は外のものと自分の内側への繋がりを表しているとのこと。また、溶けだしたように描くことにより、女の子の感情が自然のものと混じり合い溶け合うイメージを表現しているそうです。今回の展覧会のテーマが宝塚に捧げるオマージュということなので、こちらの作品には宝塚の花であるスミレやダリアらしき花も描かれていました。
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川口奈々子さんの作品について、「理解不可能なのが魅力」と宝塚市立文化芸術センターの加藤義夫館長。教育的、道徳的な童話が怖いものやグロテスクなところも含むように、美しいだけのメルヘンの世界ではなく、理解不可能な人知を超えた毒があるのが川口さんの作品の魅力と語りました。
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アーティストトーク二人目は第2室(生命の部屋)に展示されている「GISELLE」の作者、藤部恭代さんでした。川口さんのトークを聞き終え第1室から移動した人々は、熱心に藤部さんのトークに聞き入っていました。「超ロマンチック」を一度描いてみたいと思っていた藤部さんは、「春プリマヴェーラ」というテーマを与えられた時、サンドロ・ボッティチェッリの作品「春プリマヴェーラ」のインスピレーションから、ボッティチェッリと同じサイズ感で描いてみたいと思ったそうです。テーマに選んだのは、三大ロマンティックバレエの一つである「ジゼル」。「ぜひこの華やかな宝塚でジゼルを躍らせてみたいと思いました」と藤部さん。また、「光を纏って受肉していく過程を通してジゼルが生き返る瞬間を描きたい」との思いの中で、「ジゼルは生き返った時、どんな声をあげたのだろう」との疑問が生じ、いろいろと考えた結果、ジゼルが吐いた息の音の出る瞬間をイメージして描いたと語りました。
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加藤館長が、展示作業の際のエピソードを披露。実は、この作品「GISELLE」の3枚の絵は、繋げて1枚にする予定だったそうです。「離した方がいいよ」という加藤館長のアドバイスにより、急に離して展示することになったため、藤部さんは絵の具を買ってきて側面の処理を会場ですることになったのですが、そのようなことは「初めての体験でした」と藤部さん。結果的に、「広がり周りに溶け込んでいく空間の一端を描きたかったため、空間があることがより効果的」と思ったそうです。そもそも3分割にしたのは、昔の古典絵画にあるように、観音開きになることで自立する絵画にとても興味があったからとのこと。そういう意味でも離すことで、3分割がより生かされた展示になったのですね。
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この日、会場内にはもう一人の出品アーティストの姿が。サルの彫刻「travelers」の作者植松琢麿さんです。植松さんも館長に請われて、飛び入りでアーティストトークを披露。最近、境界を感じるモチーフを集めて作品をつくっているという植松さんは、だんだん四季がなくなってきている現代の冬と夏の境界としての「春」、生き物が動いてくる境界としての「春」に着目し、それらが「境界」とシンクロするところがないかと考え、今回の作品を制作したそうです。
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今回の展覧会では、キュレーションを担当した加藤館長による様々な提案があり、アーティストの方々が想像もしなかった展開になりました。そのことについて正直どのように思ったかを、加藤館長が3人の出品アーティストに尋ねる一幕もありましたが、アーティストの皆さんは加藤館長の提案にとても感謝していました。例えば植松さんのVRゴーグルを付けたサルの彫刻。一つは第2室(生命の部屋)で壁の方を向き、もう一つは第2室(生命の部屋)の水色の作品が並ぶ空間の真ん中を抱き合いながら浮き輪を付けて漂い、あと一つは、第1室(花の部屋)の入り口近くにガイドよろしく立っているというユニークな配置ですが、これも館長のアイディアとのこと。「いろいろな人のアドバイスを受け入れる度量のあるアーティストは遠くへ行けるアーティスト」と加藤館長。その館長のことを、「展覧会自体をつくってくださる方」、「自分でも想像できない見え方を作ってくださるので、いつもわくわくしている」などと語るアーティスト達。その間に長年の信頼関係があることがよくわかりました。
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制作や展示の工夫についての話は、展覧会場で聴くとよりリアルに感じられ、二時間があっという間でした。拍手とともにイベントは終了しましたが、その後も閉館時間まで、個人的にアーティストや館長に質問をするお客さんの姿が絶えませんでした。出口の前の第3室(春の部屋)はとても華やかで、アフターコロナの時代への期待と、新たなアートの聖地宝塚への夢が感じられました。それはまた、ゴールデンウィーク明けの日常に戻る活力をも与えてくれているようでした。
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メインギャラリーのある2階から1階に降りる時に、キューブホールのとても大きな絵の展示に目を奪われました。アーティストトークをされた藤部恭代さんの個展でした。京都の泉涌寺でも展示されていたこの作品群もまた、平和への願いと祈りを湛えています。
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こちらの展示も「オマージュTAKARAZUKA」展と同じく5月7日まででした。もっと何回も観たかったですが、12名の出品作家の方々は、あちこちでご活躍のご様子。これからも、個展やグループ展、ワークショップなどで再会できるのを楽しみにしています。現代美術を満喫したゴールデンウイーク。あっという間に過ぎ去ったゴールデンウィークでしたが、アートとともにゆったりと過ごした午後はとてもよい思い出になりました。

展覧会名:
宝塚市立文化芸術センター開館3周年記念展「オマージュTAKARAZUKA-春 プリマヴェーラ」
参加アーティスト:マツモトヨーコ、川口奈々子、中村眞弥子、片山みやび、小野さおり、植松琢麿、藤部恭代、福田良亮、mariane maiko matsuo、荒木由香里、柴田知佳子、青木恵美子
期間:2023年4月7日(金)~5月7日(日)
会場:宝塚市立文化芸術センター 2Fメインギャラリー
申込:不要
料金:一般(高校生以上)800円
※中学生以下無料
※障がい者手帳ご提示でご本人さま、付添の方1名まで無料
※2023年度パートナー会員無料
駐車場(有料):12台(1台は障がい者用駐車場)
問い合わせ先:0797-62-6800 (宝塚市立文化芸術センター)

※取材イベント名
宝塚市立文化芸術センター開館3周年記念展「オマージュTAKARAZUKA-春 プリマヴェーラ」アーティストトーク
出演:出品アーティスト(川口奈々子・藤部恭代)、宝塚市立文化芸術センター館長(加藤義夫)
氏日時:2023年5月4日(木・祝)
時間:14:00~15:00
場所:宝塚市立文化芸術センター2階メインギャラリー内
事前申込不要、誰でも参加可能。
事前に展覧会入場料(800円)のみが必要。

_____________________
宝塚市立文化芸術センター
住所:兵庫県宝塚市武庫川町7-64
TEL: 0797-62-6800
開館時間:10:00~18:00

休館日:水曜(祝日は開館)

宝塚市立文化芸術センターWEBサイト
宝塚市立文化芸術センターInstagram
宝塚市立文化芸術センターtwitter

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記事/写真 :YURIE(BRALIライター)

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