宝塚ゆかりの建築家宮本佳明「入るかな? はみ出ちゃった。~宮本佳明 建築団地」展と「ゼンカイ」ハウス公開

宝塚市立文化芸術センターで行われた、Made in Takarazuka vol.4 「入るかな? はみ出ちゃった。~宮本佳明 建築団地」という不思議なタイトルの展覧会のアーティストトークに参加しました。
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宝塚生まれ宝塚育ちの宮本佳明さんは、生粋の宝塚市民。そんな宮本さんが見つめてきた宝塚の過去と未来についての話、とても興味深いですね。
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会場であるメインガーデン内のガーデンハウスで、アーティストトークが始まりました。
パワーポイントで、子ども時代の宝塚市内でのスナップ写真を当時と同じ場所に置きモンタージュしたという写真を、何枚も見せていただきました。
「村野藤吾さんのデザインの中で子ども時代を過ごした。村野藤吾さんが設計したと思われる建築が点在する中、通園通学していた」と語る宮本さん。
「うちは長屋なんですが、仲の良い友人の家は、今振り返れば建築家が設計した家だったせいか、素敵な家だなあと子ども心に思ったものです」と当時の宝塚の思い出を語りました。
村野藤吾さんが設計したカトリック宝塚教会の工事中のシーンを何となく覚えているそうです。

カトリック宝塚教会は、塩尾寺道(えんぺいじみち)という古い道と阪急今津線に挟まれた、普通ではありえない三角形の土地に建っています。
「敷地自体を村野さんが選んだのではないかと考えています…」と宮本仮説が展開。
1980年に竣工した宝塚市庁舎も村野藤吾さんによる建築で、ストックホルム市庁舎にインスピレーションを受けたのではないかと言われていると紹介しました。

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武庫山幼稚園と宝塚第一小学校に通った宮本さん。建築家の乾久美子さんも、武庫山幼稚園と宝塚第一小学校に通っていたそうです。かつて宮本さんの祖母は、宝塚第一小学校の教師をしていたとか。

宮本さんが1992年に設計した武庫山幼稚園の子ども文庫は、壁を羽根のように開けられるようになっていて、園児や保護者の憩いの場として愛されています。
神奈川県庁から宝塚に出向していた土木技術者だった宮本さんの祖父が、戦後公職追放にあい宝塚で始めた土木事務所は、宮本さんの父親の代に建築設計事務所になりました。その移り変わりを見てきた宝塚市湯本町にある実家が、阪神淡路大震災で被災し全壊判定を受けたにもかかわらず、取り壊すのではなく補強し、「記憶の器」として保存された「ゼンカイ」ハウスです。近所には松竹映画の監督、小津安二郎や女優の原節子が泊まっていた旅館があり、宮本さんは幼い頃、新珠三千代に抱っこしてもらったこともあるそうです。

宮本さんの建築家への志は、東京大学・建築学科進学後に定まりました。父親の建築設計事務所は継がずにフリーで活動し、アトリエ第5建築界(現宮本佳明建築設計事務所)を開きます。現在は、株式会社宮本佳明建築設計事務所代表の傍ら、早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科教授として後進の指導にあたっています
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宮本さんは1996年の第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展で日本代表作家に選出された際、約20トンもの震災の瓦礫を宝塚から輸送して、日本館の床一面に積 み上げたインスタレーションを展開。

最高賞であるパビリオン賞(金獅子賞)を日本館として初めて受賞しました。「建築とは建てることなのに、崩れ去ったもの、瓦礫を展示するというのは面白い。アバンギャルドで、現代アートの思考に近いなと思った」と宝塚市立文化芸術センターの加藤義夫館長は当時を振り返ります。加藤館長はKPOキリンプラザ大阪での宮本さんの展覧会で、膨大な量の模型を見たときの驚きと衝撃を、今でも鮮明に覚えているそうです。

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「建築は記憶の器」という自論を持つ宮本さんは、「ワインの原料になるブドウのように、建築も地面からしか生えない。その場所の持っているニュアンスが表現されている建築が名建築」と語り、「建築のテロワール」と表現していました。六甲山南麓活断層帯にある宝塚の土地の持つニュアンスとは、一体何なのでしょうか。

宮本さんは「宝塚の場合は砂防都市(砂防によって人工的に作られた町)であり、六甲山南麓活断層帯と有馬一高槻構造線断層帯が直角に出会う活断層に支配された場所」と解説します。宝塚は日本で最初に砂防が始まった場所。武庫川水系の逆瀬川で土砂の流出が激しかったため、明治30年頃より数々の地水対策が行われていたと言います。

また、「東洋一のダンスホールと言われた宝塚会館が小学校低学年の頃まで建っていたのを覚えています。何なのだろうと思っていました」と宮本さんは語り、宝塚会館と宝塚ホテルを設計した古塚正治氏は、宝塚にとって重要な人と紹介しました。そして、宝塚の町づくりにおいて小林一三氏だけでなく、平塚嘉右衛門氏(元良元村村長、宝塚市功労者)の力が絶大だったことも強調しました。

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旧宝塚ホテルの保存運動に関わっていた宮本さんは、2018年に元宝塚市長の庄司泰一郎氏の呼びかけにより、宝塚ホテルを残すための提案設計を行いました。宝塚ホテルはゲートハウス的に使い、その背後にダンスホール、左側に住宅用タワーを作り、経済的に採算が合うような仕組みも考えていたそうです。(詳しくは、宮本佳明建築設計事務所のホームページで見ることができます。)宮本佳明建築設計事務所として使用されている「ゼンカイ」ハウスですが、この展覧会の会期に合わせ公開中です。建築に興味がある方は、ぜひこの機会をお見逃しなく。

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メインギャラリーで開催中の宮本佳明さんの展覧会。「ゼンカイ」ハウスをはじめとする宮本さんの設計した代表的な建築の原寸大模型を作り、展示会場に入れてしまおうという画期的な試みです。

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「宝塚に住む建築家を目指す子ども達に一言」と宮本さんに聞いてみると、宝塚という町の特徴について、「宝塚は地形的にも面白い町であり、村野藤吾さん、乾久美子さんなどの著名な建築家ゆかりの町」と教えてくれました。そしてもちろん、宮本佳明さんゆかりの町でもあります。宝塚に住む子どもたちは、幼い頃から建築について見聞きする機会も多く、建築家を目指す環境に恵まれているのかもしれません。この町から、宮本さんに続いて世界で活躍する建築家が生まれるといいですね。

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展覧会名: 「入るかな? はみ出ちゃった。~宮本佳明 建築団地」
会期: 2023年 9月16日(土)~10月22日(日)
会場: 宝塚市立文化芸術センター 2Fメインギャラリー
開館時間: 10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日: 水曜
料金: 一般(高校生以上)1,000円
※中学生以下無料
※障がい者手帳ご提示でご本人さま、付添の方1名まで無料
※2023年度パートナー会員無料
駐車場(有料):12台(1台は障がい者用駐車場)

住所:兵庫県宝塚市武庫川町7-64
問い合わせ先:0797-62-6800 (宝塚市立文化芸術センター)

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イベント名: Made in Takarazuka vol.4
「入るかな? はみ出ちゃった。~宮本佳明 建築団地」アーティストトーク
関連イベント パートナーズサロン
対談:宮本佳明(建築家)×米井寛(株式会社東畑建築事務所 代表取締役社長)
日時:2023年10月14日(土)14:00~15:30
会場:庭園内 ガーデンハウス
(このイベントは終了しています)

宝塚市立文化芸術センターWEBサイト
https://takarazuka-arts-center.jp/

宝塚市立文化芸術センターInstagram
https://www.instagram.com/takarazukatac/

宝塚市立文化芸術センターtwitter
https://twitter.com/takarazukaTAC


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記事/写真 :YURIE(BRALIライター)

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